センターバック論。もっとも重要な要素は、技術でも高さでもなく……【岩政大樹の現役目線】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

センターバック論。もっとも重要な要素は、技術でも高さでもなく……【岩政大樹の現役目線】

元日本代表・岩政大樹が書く「勝つためのセンターバック像」

■理解できなかった「秋田豊のようなセンターバックになれ」という意味

 他にもセンターバックは当然、強さや高さも必要ですし、最近ではパス出しや速さなども求められるようになりました。サッカーの戦術はどんどん進化していて、センターバックにも時代とともにより多くのタスクが与えられるようになってきたのです。

 ただ、これらの「センターバックに必要とされる能力」と「格」とはあまり関係がありません。むしろ、この能力にばかりこだわることが「格」を持つことにマイナスに働くことさえあります。

 僕が鹿島アントラーズでスタメンを張るようになった頃のことをよく思い出します。僕は当時から戦術を語るのが好きで、声でチームを動かすのが好きでした。それが自分の個性であり、売りであるとも考えていました。
 その頃に、アントラーズのあるフロントスタッフの方にこう言われました。

「周りを動かそうとするのはいい。ただ、秋田(豊)のようにどんと構えて、他の選手に好きにやっていいと言えるようにならないと」

 その時、僕はその意味がよく分かりませんでした。
 センターバックは声を出してチームを動かすのが仕事です。時にはチームに檄を飛ばすこともしなくてはいけません。ましてや、失点して叩かれるのは自分たちなのだから、言われたような振る舞いはできない、もっと言えば、すべきではないと思っていました。

 僕は少し、"頭でっかち"になっていました。自分の考えるセンターバック像を論理的に考えるあまり、大事なことから目を背けてしまっていたのです。
 その意味を理解していったのは初タイトルを取ったあたりだったでしょうか。
 大事なのは心の奥底でした。心の奥底に、「大事なこと=結果への覚悟」を持っているか否かでした。

 覚悟、責任。

 言葉で言えばありきたりなものになってしまいます。
 指示をうるさく叫んでもいいのです。周りを叱り飛ばしてもいいのです。失点の理由を冷静に分析してもいいのです。
 ただ、その時の心の奥底には、結果への覚悟と責任がなくてはいけません。それがあるだけで、チームメイトへの伝わり方がまるっきり違うのです。そして、自分自身のプレーも見違えていくのです。
関連記事:阿部勇樹、中村憲剛、柏木陽介がオシムに聞きたかったこととオシムの答え

次のページ■プロのセンターバックは能力ではなく責任に対する覚悟が必要

KEYWORDS:

オススメ記事

岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


この著者の記事一覧